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2009年6月24日 (水)

「会社とは-Kゼミ24人の軌跡」再読

「会社とは-Kゼミ24人の軌跡」斎藤茂男(日本経済新聞社)

ヴォータンの人生を変えた本です。

本棚の整理をしていたところ、奥の方から出てきて、、、、そのまま、全部読み直してしまいました。

 

1981年発行のあまりに古い本なので、Amazonのアフィリなどから、皆さんにご覧頂くのに参考となる様な、詳細な情報を引っ張ってくることが出来ませんでした。

その後、筑摩書房から文庫本として

「サラリーマンは幸福か-慶應Kゼミ24人の軌跡」

と題を変更して発行されていますが、図書館で借りるか中古本として買うしかないと思います。

 

著者は当時の共同通信社の編集委員です。

 

何か特別な潜入ルポや、血湧き肉踊る様なドキュメンタリーではありません。

 

ひたすら、慶應義塾大学を卒業した35歳~40歳のサラリーマンにインタビューをし、それを変な脚色をせずに、淡々と書き留めています。

 

当時、ヴォータンは入社2年目。ようやく、邦銀の支店の「外回り」に出る様になり、会社勤めに様々な疑問を感じ始めたころでした。

 

35歳~40歳と言えば、会社では中堅どころの一番活躍している世代のはずです。

 

しかも、慶應義塾大学のK-ゼミ(おそらく加藤寛先生ではないでしょうか?)出身者と言えば、間違いなくエリート街道を走っているはずです。

 

ところが、ヴォータンが感じたのは、諦観とでも呼ぶべき、ある種の無力感です。

 

もちろん、声高に会社の悪口を言う訳でもなく、不満をぶつけるでもなく、どの方も淡々と語るのですが、仕事をすることに大きな価値を見出している訳でもなく、ビジネスの世界でのし上がってやると言った野心が感じられる訳でもなく、、、

 

今、考えると、日本の会社で偉くなるには、「出る杭」になってはいけないので、そう言う態度を取ることが、処世術として身についていたのかもしれませんが、入社2年目のヴォータンには、何とも夢のない世界に見えました。

 

当時、ヴォータンは、2年目の現実に直面しながらも、まだ新入社員の志と言うべきか、漠然と、将来このビジネスの世界で大きくなってやろうという野心を持っていました。

それだけに、自分が15年後に、こう言うことを語る人になっていくのかと思うと、途端に自分の人生が、とても寂しいものに思えてなりませんでした。

もちろん、どの方も、相当なインテリですし、きちんと物事を考えてお話になっているのですが、それが分るだけに、余計に寂しくなってしまいました。

 

ヴォータンは、この本を読んだ1年後に、ディーリング・ルームに配属され、それこそ世界観が変わるほどの変化を経験しました。

実は、卒業前にゼミの担当教授から大学院に行くことを薦められていたので、大学に戻ることも考えていたのですが、この異動のお陰で、疑問を感じていた邦銀に留まることになりました。

 

しかし、それから4年後に邦銀を出てしまいます。

 

「どうして?」

と、聞かれると、

「マーケットの世界にずっと居たかったから」

と答えるのですが、実は心の奥底に、この本で読んだインテリのエリート・サラリーマンの先輩方の、あまりに寂しい心象風景が残っていたことも、大きな要素だったと思います。

 

30年近く前の本ですが、今読み返してみても、古さを感じません。

 

著者の文章力の高さもあって、非常に読み易い本です。

サラリーマンとなったインテリが何を考えていたのかを知る意味で、一読に値すると思います。

 

ここの登場されていた皆さんも、もう60歳を過ぎていらっしゃいます。

今、インタビューしたら、どうお答えになるでしょうか。。。。

2009年6月14日 (日)

「大転換 脱成長社会へ」--経済危機の文明論的考察を読む

大転換―脱成長社会へ Book 大転換―脱成長社会へ

著者:佐伯 啓思
販売元:エヌティティ出版
Amazon.co.jpで詳細を確認する

佐伯先生はヴォータンの大先輩に当たります(と、言っても8年しか違っていませんが)。

今般の金融危機に端を発した世界的なリセッションに関しては、皮相なアメリカ批判をして溜飲を下げると言ったレベルの低い言説が多く見られます。

その点、佐伯先生は、経済思想史家としての文明論的視座を持っておられるので、非常に知的刺激の多い指摘をされています。

 

特に、今回の金融危機が単に新自由主義的パラダイムの崩壊と言うことに留まらず、近代産業社会の限界、つまり、シュンペーターの言葉を借りれば

「資本主義はその成功ゆえに没落する」

が現実化した「大転換」を示唆しているとしています。

 

もはや資源の効率化を最大限に推し進めることで、物的な豊かさを現出し、人々の厚生を向上させると言うパラダイムが働かなくなり、

「人とモノのゲームから、人と人とのゲーム」

に変化すると言う考察は傾聴に値します。

 

ヴォータンは、基本的には市場原理を優先する立場に立ちますので、全面的に佐伯先生の主張に賛成しかねるところもあります。

しかし、このブログでも、終身雇用を前提とした社会制度を崩すことや、アメリカの猿真似にもならないホワイトカラー・エグゼンプションを直輸入したりと言った、日本的な良さを無くすことに反対してきましたので、先生の

「日本は、外国(特にアメリカ)の真似をしてはいけない」

と言う意見には、まったく同感です。

 

佐伯先生は、フロンティアの消滅により、資本主義の成長エネルギーが枯渇してきている現代では、「社会化」と言う形で、市場経済に乗らない分野を意識的に保護していかなければと主張しています。

 

ヴォータンは市場の失敗の部分に関して、もっとセーフティ・ネットを社会的に張るべきであると考えていますが、先生はさらに一歩進んで、もはや「市場の失敗」と言う形での副産物と見るのではなく、むしろその分野に対して社会として積極的に関わっていくことが必要だと言う訳です。

 

ただ、

「その為には、『政治力』が必要であるが、残念ながら、現在の日本にそれだけの政治力があるとも思われないのである」

「90年代以降の日本の政治は、あまりに大衆情緒やそのつどの出来事に引きずられ、ポピュリズムとスキャンダリズムへと流されてゆく」

「今日の日本の大衆型政治にそれだけの政治を求めるのは、かなり厳しいことではあろう」

と、しています。

 

ウーーーーン、これでは全然救われないんですが、、、、 

 

どうも口述を元にしたらしく、ちょっと論旨が怪しかったり、つながりが悪いところがありますが、頭の体操として読んでおくべき好著だと思います。

2009年6月 3日 (水)

「世界経済危機 日本の罪と罰」「未曾有の経済危機 克服の処方箋」を読む

世界経済危機 日本の罪と罰 Book 世界経済危機 日本の罪と罰

著者:野口 悠紀雄
販売元:ダイヤモンド社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

未曾有の経済危機 克服の処方箋―国、企業、個人がなすべきこと Book 未曾有の経済危機 克服の処方箋―国、企業、個人がなすべきこと

著者:野口 悠紀雄
販売元:ダイヤモンド社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

失礼な言い方になってしまいますが、日本の大学の先生には、金融の実務に関しては、ほとんど素人同然の方が大勢いらっしゃいます。

 

「為替の先物レートが、将来の為替レートの水準を規定している」

と言う、珍妙な論文を見て、ひっくり返ったことがありますが、事実です。

確かに、超長期的には金利水準=インフレ率と考えると、購買力平価説から

「為替レートを規定している」

と言えないこともないでしょうが、6ヶ月やそこらの先物レートで

「将来の為替レート云々、、、」

と言われたのでは、ビックリしてしまいます。

 

余談はこの辺にして、この野口悠紀雄先生は、日本版MBAを目指していらっしゃるだけに、実務家との情報交換もきちんとされている様で、浮世離れした話は書いていらっしゃいません。

 

考え方、現状認識もヴォータンと驚くほどそっくりです。

 

「そんなにアメリカが嫌いですか?」(2009/3/3)

http://wotan.cocolog-nifty.com/blog/2009/03/post-5b9e.html

 

にも書きましたが、

「アメリカの貪欲資本主義の崩壊」

「アメリカ型市場原理主義の蹉跌」

などと言う考え方が、いかにおかしいかと言うことを野口先生も書いていらっしゃいます。

 

また、一部輸出産業の頑張りに、日本国全体がおんぶに抱っこ状態となってしまったことから、今回のように外需が落ち込んで、輸出産業が苦境に陥ると、日本全体が落ち込んでしまうと言う点に関しても、同意見です。

 

この2冊は、重複しているところもありますが、現在起きていることを、間違ったバイアスを掛けずに見る為には、非常に有用だと思われます。

 

おまけですが、

「自分に投資せよ」

「読書が重要である」

と言う点でも同意見です。

2009年6月 1日 (月)

「まんが パレスチナ問題」を読む

まんが パレスチナ問題 (講談社現代新書) Book まんが パレスチナ問題 (講談社現代新書)

著者:山井 教雄
販売元:講談社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

最近の新書は、中身はまさに「新書レベル」で薄っぺらでも、タイトルで売ってしまう(例えば「お金は銀行に預けるな」なんて悲惨な本もありましたね)ものが多いのですが、この本は逆に見事なタイトルのつけ損ないだと思います。

「『お金は銀行に預けるな』は見事なコピペ本でした」(2008/7/3)

http://wotan.cocolog-nifty.com/blog/2008/07/post_a8f6.html

 

いきなり「まんが!」ですから、ちょっと教養の高い大人は書店で手を伸ばさないと思います。

ただ、タイトルとは裏腹に、内容は非常にしっかりしていますし、ヴォータンが一番大事だと思う

「難しいことをやさしく書く」

と言う姿勢をきちんともって書いています。

 

まあ、それがちょっと行き過ぎて「まんが」なんてタイトルをつけてしまったんでしょうが、、、

 

キリスト教、ユダヤ教、イスラム教が同根の宗教で、いかに相似性が高いかと言うことから始まって、今のパレスチナ問題を複雑にしたのは、イギリスの二枚舌外交であることまで、正確に記述されています。

また、今では無法なテロリストを排出する、非寛容な危険な宗教と言う印象が強くなってしまったイスラム教が、実は一番寛容であると言うこと(世界史で習ったと思いますが、、、)

むしろキリスト教の方が、はるかに高圧的に異文化を破壊したこと

など、一応知っているはずのことに関しても、もう一度頭の整理ができます。

 

さらに、第一次中東戦争以降の動きも、わかり易くまとめられていますし、アラファトが無能でしかも私利私欲に走っていたことも、きちんと書いてあります。

 

タイトルは変ですが、是非読んでおくべき好書だと思います。

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